7台目のスネアです。ちょっと以前に秋葉原の某地下ショップで試奏しました。狙いは「タマとパールを比較してみたかった(笑)」というドラマーなら誰もが描く純粋な動機。

Pearl
Masters Custom
MMX-1465SD
カラー:プラチナムミスト・ラッカー

サイズ
シェル
フープ
テンション
14×6.5
メイプル4プライ
+4プライレインフォースメント
ダイキャスト
10

何処に行っても置いてある印象があります。“パール”というメーカーは、最もその製品に触れる機会が多い楽器メーカーだと思います。スタジオに置いてあるドラムセットも、スネアドラムもペダル等のハードウェアも、パールはかなり多数派で、おそらく日本のリハーサルスタジオ、おかげさまでシェアNo.1(笑)といえるでしょう。しかし、楽器は実際に所有しないと、そのメーカーの「狙いを理解する」事や、そのメーカーが「自分の好みの音を出すかどうか」判断する事は難しいと思います。

部室(学生時代)や、リハーサルスタジオで、
安いパール製スチールスネアドラムしか触った事がなかった私は、昔からパールに対してそれほど特別な思い入れは無く、シンバルスタンド、ミュート、練習台などの「ドラム以外のモノ」しか、パールの製品を購入した事がありません。インターネットのアンケートに答えただけで、Tシャツをくれた親切なメーカー(笑)パールとは「何となく縁がないなあ」と思っていたのでした。

触っていると幸せになれる(笑)ダイキャストフープやラグ等のパーツの何ともいえないR感。スネアというだけでなく、モノとしての充実感が溢れています。所有する人の心をくすぐる事でしょう。
サウンドも、同じ6.5インチメイプル胴である、私の所有するTAMA Starclassicとは異なり、レインフォースメント付き(シェルの補強材、音に影響をあたえます)で、またテンションも10なので、想像したよりも異なるキャラクターです。「へえ、パールって(高い奴は)こんな感じなんだ」その時試奏した国内外各メーカー10機種程度の中でも、パールのMMXのサウンドは私の好み的にアタマ一つ抜けていて、しっかりとした中にも明るさがあって、比較的チューニングもしやすく、非常に好印象でした。

「Pearlもイイなあ♪」と思いつつ、その時は買わずに帰ったのですが、その後「欲しい欲しい病」にかかり(笑)でも新品で買う程余裕が無かったので、展示品特価やインターネットオークションや中古ショップを1ヶ月ほど丹念に探していました。でも見つからない。いや、本当は結構見つかっているんですけど無かったのです。私の欲しいカラーが。
最短で2日、早ければ1ヶ月、長ければ3ヶ月

これは新品でパールのドラムを購入する際の「納期」です。通常ドラムは職人さんがひとつひとつ丹念につくる受注生産の手作り商品なので「おめでとうございます、あなたの発注内容と全く同じ在庫がありました!」というようなラッキーマンでもない限り、注文から2日で商品が届くなんて、まず考えられません。急に欲しいと思っても2日で届くのです。これは今までではあり得なかったスピード納入で、学校、スタジオ、ライブハウス、イベント業者などなど、このシステムの恩恵にあずかれる人や企業は少なくないでしょう。

パールが作り出したこのシステム、本来なら他メーカーへの強力なアドバンテージで拍手喝采ものなのですが、実はこれにはちょっとしたワケがあって・・・
日本で最も歴史のある老舗ドラムメーカー「パール」は、現在コスト削減を狙い、国内メーカーでははじめて、生産拠点を海外に切り替えています。単純に考えて国内と海外、同じ製作日数でドラムが出来上がったとしても、国内生産であれば、工場からトラックで「およそ1日程度」で運べますが、海外生産した場合はそれに遠距離の船便の時間が加算され、これではせっかくコストを削減しても、他メーカーに対して、最初から納期的にハンデを追ってしまいます。この問題に対してパールが出した解答は「売れ線の色のモデルだけ在庫を切らさない」というものでした。

決まったスケジュールで生産し続け、日本での在庫を切らす事のない、各モデル数色づつの
「ストックカラー」をラインナップ。この考え方そのものは、非常に合理的かつ画期的なものです。ドラムは食べ物ではないので、作り置きしても痛んで売れなくなる事はありません。エントリーモデルのみならず、パールの高級シリーズ“THE MASTERS”シリーズのドラムまでもが「待たずに買える」マクドナルドの如きこのシステムは、評価されてしかるべきだと思います。がしかし、私が個人的に問題だと思うのは残されたストックカラー以外の存在。パールのカタログで「カスタムオーダー」とされ、今まで通りの受注生産である「その他の色(カスタムカラー)」の存在です。

パールに限らず日本のメーカーYAMAHAやTAMAも、木胴スネアドラムもドラムセットもほとんど受注生産で、やはり納期に時間がかかりますが、まだ国内で生産しているおかげで、納期は長くて一ヶ月程度です。

パールのカスタムカラーモデルを注文すると、当然現地の工場に発注内容が行くわけですが、現地の状況や、発注をかけるタイミングによって生産までのタイムラグが発生したり、加えて前述の船便という要素も重なり「早ければ1ヶ月、長ければ3ヶ月」と巷で言われるように、実際納期にはかなりの幅が存在しているようです。まるで海外製品の様ですが、要するに
「欲しい色」がストックカラーだったらあなたは幸運、それ以外の色なら・・・うーん残念!!とりあえず3ヶ月は待つつもりでいて下さい!という事ですね。

ちなみにこのMMX1465SDの場合、全15色のうち
3色がストックカラー、それ以外の12色はカスタムオーダーで納期が3ヶ月程度かかるという旨がカタログに記載されています。

私的には#114[LA]リキッドアンバー・ラッカー、#128[VS]ヴィンテージサンバースト・ラッカーなどに興味がありましたが、結局上記のようなカラーは店頭の新品ですら置いてなく、別のカラーの状態のいい中古をネットで捜し、電車に乗り継ぎ遠くまで出掛け、実際の商品を見てから購入しました(程度が良くて安かった!!)スネアを買う為に遠足に行ったのははじめての経験で、行きも帰りもウキウキ楽しかったです(笑)
このスネアは現在、GS(グループサウンズ)のコピーバンドで使ったりしています。同時にREMOのドラムヘッド「ルネッサンス」を試しているところです。繊細なプレイもパワープレイも平気な顔して付いてくる。スネアとしての素性が良くて、狙った音を出しやすい。MMXはそんな「懐の深い」ナイスなスネアドラムです。GSバンドはスーツを着て演奏する事が多いので、上品なプラチナムミスト・ラッカーの雰囲気がとてもマッチしています。かえって所有してからこの色がとても気に入りました。この色は3色のうちのひとつ、最短納品のストックカラーですが、もし新品を購入したとしてもこの色にしたかもしれません。結局のところドラムは、いい音が出てくれれば、見てくれはそのうち気にならなくなったりします。しかしながら、雑誌やカタログ、楽器店の店頭で、ぱっと見から受ける「欲しいと思う感情」はやはり重要です。殊に色は視覚に強く訴える情報です。Starclassicの例でもあるように、音よりも先に色に「魅せられて」衝動買いするような私みたいな客もいるのです。
印刷物や小さなカラーチップの色見本では、製品の本当の色彩はなかなかイメージしづらい。私は大切なものを買う時には、形や色や使い心地を何度も確かめ「これでいいのだ」としっかり確認してから購入したい。パールさんにも楽器店さんにもこの辺りは頑張って欲しいところです。たとえばショップの店内に飾ってあるスネアドラムがストックカラーだけなのでは寂しすぎます。ショップでこそ、なかなか届かないカスタムカラーのモデルも飾っておくのが好ましいのではないでしょうか。

中古買った人間がね、偉そうに何言ってるんですかね(笑)

でもね、もしもあなたが楽器店でドラムを購入するとして、欲しい色の商品が飾ってなくて、どのショップに行っても実際にその色を見れなくて、いざ発注しようとした時に「その色だと、納期が何ヶ月も掛かるかもしれない」と言われたとしたら・・・・

パールさんゴメンナサイ。少なくとも「私は」注文できないと思います。
正確な色が分からない不安感と、発注の際に確定しない納期。私がせっかち人間であると同時に、どうしても「日本のメーカーなんだから待ててひと月だ」と考えてしまうのです。

楽器はパーソナルなモノだと思います。定番ももちろん素晴らしいと思いますが、
人と少しでも違うものを使いたがるのは、音楽をやっている人なら当たり前の事。それも“天下のPearl”なんだから、ほんの少しでもユーザーの購入意欲をそぐような現行のシステムは、何としてでも是正してもらいたいです。シェルの素材、サイズ、カラーに至るまでカスタム可能で「世界で一台だけ」のモデルを作れる、パールご自慢の完全受注生産のプロ御用達“Masterworks(マスターワークス)”シリーズなら納期が何ヶ月かかろうが理解出来ますが、レギュラーシリーズである“Masters Custom MMX”の納期を聞いて、セットの購入の検討対象から外してしまった人間は、私を含め一人や二人じゃないと思います。

残念!!

パール株式会社 サイトはこちら
http://www.pearlgakki.com/

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