昔から「ひとつは欲しかった(持っていたかった)」6.5インチメタルシェルスネア。特に私は以前からブラスシェルのサウンドとラディックを崇拝(笑)していたので、これに関しては「きっと6.5のメタルはブラスシェルで、恐らくラディックを手に入れるんだろうな」と当たり前のように思っていました。
TAMA
PBZ465A

サイズ
シェル
フープ
テンション
14×6.5
ブロンズ
ダイキャスト
10

まだ私が青春まっただ中(笑)の頃に借りていた「ラディックの6.5インチブラス」。その華やかな音が今でも忘れられない私は、ここしばらくの間、欠けた最後のピース(ウソつけ!)を求め、ブラスを中心に国内外の6.5インチメタルシェルを片っ端から試奏していたのでした。
でも今回フタを開けたら「新たなお気に入り」はこのブロンズシェルになっていました。音量、音質、叩き心地、どれをとっても非常に好みです。「君はどういうスネアサウンドが好きなの?」と訊かれたら、きっとこれを叩きながら「こういうサウンドです!」と即答すると思います。
お約束のラディックのブラスエディションから、同社ブラックビューティー、そして各社のシグネチャー数台を経由して、パールご自慢の黒い削り出しアルミシェル(←カッコいい!)に至るまで、東京23区(とはいえ千代田区、豊島区、新宿区、渋谷区あたり)を駆け回り、試奏した6.5インチメタルシェル(新品)の数は国内外含め軽く10機種以上に上ります。今回6.5メタルを選ぶに当たって、チューニングはあまりシビアにやりませんでした。判断基準は「どんな音が出せるのか」ではなく「私の好きな音が出るのか」どうかだけ。店員に睨まれながら(笑)時間をかけて機種ごとの「オイシイ部分」をじっくり探すのではなく、自分本位に私がよく使うレンジ「のみ」で試して、その中で「これだ!」と選び抜いたのがこのTAMAブロンズシェル(PBZ465A)でした。こいつは私が金属シェルに求めるサウンドをかなり高次元で兼ね備えてくれています。

マメ知識
ブロンズ(bronze)
青銅(せいどう)といいます。銅を主成分とし、錫を含む合金。歴史の教科書にもあるとおり、石器時代の次にはこのブロンズを使った青銅器時代に突入します。オリンピックの銅メダルとしても有名。

ブラス(brass)
真鍮(しんちゅう)といいます。銅と亜鉛の合金。トランペットやトロンボーンなどの金管楽器に使用されています。ブラスバンドの名前の由来ですね。
無メッキのブラスシェルは以前「キレイな5円玉」と表現しましたが、このブロンズシェルはご覧の通りサンポールで洗ったかのような「キレイな10円玉」のカラーであります。また(私のベルブラスと比べたら月とスッポンでありますが)1.2mm厚で、そもそも重たいブロンズ素材ということもあり、スネアとしては「それなりに」重量はある方です。まあ、金属の6.5インチとしてはごく普通(許容範囲)なのではないでしょうか。

このタマ・PBZ465Aは
「リッチな低音・濃いサウンド」が最大の魅力です。Webカタログに「ファットな音響特性〜」などと書いてありましたが、まさに特徴はそこですね。金属胴で音は大きいのですが決してやかましくなく、低域から高域までバランスが良く、なおかつ出るべきところはしっかり出ている・・・痒いところに手が届く感覚は、まるで何年も一緒に生活している、しっかりものの奥様(笑)の様です。このスネアはノーミュートでイケます。ミュートする必要性を全く感じられないほど、サウンドが自然で嫌みがありません。これを演奏している時は私にとってまさに「癒しの時間」です。これは素材のなせる技なんですかね。
ブロンズは長年連れ添った女房であり、ブラスは刺激的な愛人(笑)

比較するとブラスは、マスカラ命でセレブなメイク(笑)を好む「派手で刺激的な愛人」です。明るくイイ女ですが、時に気分屋でわがままだったり、信じられないような「キッチュ」な部分があったり・・・まあそういった特徴が「スッカーン」と弾けて鳴る、アッケラカンとしたブラスシェルのブラスたる所以なんですけど・・・それにひきかえ、このブロンズシェルの場合はそういった部分が何処にも見当たらなかったのです。

実をいうと、ラディック・LB402BT(私の使用機種LB400BTの深胴タイプ)と、どちらにするか最後まで悩みました。両機種はサウンドの好み的に甲乙つけがたく、より高域に華がある「ブラス」を取るか、より低域に魅力のある「ブロンズ」を取るかだけの差でした。これは経験則ですが、スネアもその他のドラムも「ちょっとうるさいかなあ・・・」程度の方が、実際にライブハウスなどでマイクに乗った時に「思ったよりもいい音」になったりする事が多いです。ラディックは既に5.0インチを持っているので、傾向はそれなりに想像が付きますが、このブロンズシェルに「これだけ耳障りな部分が無い」となると、恐らく自分で想像しているよりも、もっと低めで抑え目の「ダンッ」とか「ズダンッ」という音になる可能性が高いでしょう。しかし今回は「サイズこそ違えども、既にラディックのブラスは一台持っている」という事実と、新たなシェル素材への好奇心と期待感、そして自分が叩いている時の「感覚」と「気持ちよさ」を優先したかったのでブロンズを選びました。


あ、でもTAMAには申し訳ないですが、見た目はラディックの圧勝(笑)でした。
ていうか、TAMAも(普通の)チューブラグ出しなさいよ!!

話は横道にそれますが、色々叩いてみて分かったこと。同じブラス素材のシェルでも他メーカーとラディックの違いはズバリ「低音」です。同じ素材でありながら(今回のブロンズほどでは無いにせよ)、ラディック・ブラスエディションの方が明らかに低音が充実していて、国内外の他メーカーのブラスよりも総じて耳に心地よい「バランスの取れたサウンド」になっているからです。これはラディックのブラスシェルが支持されている理由のひとつだと思いました。

ちなみに華やかな高音域が特徴のブラス素材のスネアの中には、数多くのプロドラマーが好んで使用しているラディックの名機、定番中の定番モデル「ブラックビューティー」などに見られるように
「ブラックニッケル塗装」を施したシェルが数多くみられ人気です。


Brand
Artist
Model
Shell
TAMA
Simon Phillips
SP1455H
14 x 5.5 inch Brass Nickel Black Plated
Kenny Aronoff
KA145
14 x 6.5 inch Brass Nickel Black Plated
Pearl
Steve Ferrone
SF1465
14 x 6.5 inch Brass Black Nickel Plated
Chad Smith
CS1455
14 x 5.0 inch Steel Black Nickel Plated
YAMAHA
Manu Katche
SD465MK
14 x 6.5 inch Brass Black Nickel Alloy
上記の通り表記方法は違えども、どれも間違いなくブラックニッケル塗装です。工業製品はヒット商品があると、必ず別のメーカーから似たような「後発モデル」が出るものです。基本的にはドラムの「防錆」の為におこなう「金属塗装」ですから、特許なんてものは無きに等しく、よってパールもヤマハもタマも右へ倣えで、各社ともシグネチャーモデルを筆頭に、この なんちゃってブラックビューティー(笑) 黒いニッケル塗装のモデルを積極的にリリースしています。

そもそも「ブラック」なので、塗れば自動的に精悍なルックスにもなり「一石二鳥」ともいえるこの塗装を施したスネアは、前述の通りプロを筆頭に国内外の多くのドラマーに支持されているそうで、私もご多分に漏れず以前からとても興味がありました。で、今回「満を持して」というか、非常に期待をして試奏に臨んだのですが、私にとっては残念ながら
「それほどでも無かったかなあ・・・」って感じです。
人によっては音が「より華やかになる」という意見も聞きます。この塗装によって「より芯がクッキリ」したり、「より低音が充実」したりするそうなのですが、実際叩いてみると、確かに塗装のおかげで「低音が目立つ」感じはしますが、どことなく「塗装によって単に高域を抑え過ぎてしまい、結果として低音が出ているだけ」のような感じがして、ぶっちゃけ「6.5インチのブラス」に関しては、この塗装じゃない方が好みでした(使っている人はゴメンナサイね)。まあ短い時間だったから分からないだけかもしれませんし、きっと私のチューニングが的確じゃないのでしょうし、本家のブラックビューティーに関しても、あくまでも「再販された現行モデル」であり、それもチューブラグ仕様しか試奏しなかったので何とも言えません。皆さん、興味のある方は実際にお店で試してください。

つい最近、かのSteve Ferrone(スティーブ・フェローン)さんとパールとのエンドース契約が切れてしまいました。よってゴールドパーツをふんだんに使った彼のシグネチャーモデル(SF1465)は残念ながらもう作ってないんですって。今回の
「お気に入りの6.5インチメタルシェルを探す旅」ですが、実を言うときっかけは、彼のシグネチャーモデルが(ブラックビューティーよりも安くてカッコいいので)以前から気になっていて、たとえ買わなくても(ウソつけ!)店頭から無くなってしまう前に一度でいいから試奏してみたかったのです。日頃から「これが最後の一台です」というセリフに弱い私にとっては危険な賭け(笑)でもあったのですが、結果、興味本位から比較対象として試奏していただけのブロンズスネアに目が止まったのは、まさしく「ひょうたんからコマ」ですね。このブロンズシェルと知り合えて本当にラッキーだったと思いました。

最後に、これをご覧の皆さんなら分かりきっている事ですが、
スナッピーひとつでスネアのサウンドは激変します。私も買ったスネアは使っているうちに「あれやこれや」と試して、メーカー純正にこだわらず、好きなサウンドや、狙った音の出るスナッピーに変更したりしています。楽器を選ぶ際、ショップで新品の展示品を叩いた場合は、当然メーカー標準のヘッドやスナッピーが付いているので、本来なら仕様をできるだけ合わせた状態で比べないと、そのシェルの魅力を「リアルに」比較し判別するのは難しいと思います。また、それと関連しますが、特に国産のスネアの中に若干「音よりもコストを優先」してしまっている機種が、残念ながらやっぱり存在すると再認識しました。今回も実際「何でこんなのが付いてるの?」とか「このパーツがこっちに付いてたらなあ・・・」っていうのは結構ありました。そんな中にあって、TAMAがこのブロンズスネアに42本スナッピーと、亜鉛ダイキャストのフープを奢っていたという事実は、私的に非常にポイントが高かった部分です。もちろん「スペックが全て」などと言うつもりは全然ありませんが、もしこれが「フランジフープと通常のスナッピー」であったなら、きっとこのリッチなサウンドは出なかったでしょうし、もしかするとこのブロンズは選ばなかったかもしれない。私にとっては「6.5インチメタルならこういう仕様がいいなあ」って思い描いていた製品ズバリでした。マーケティングの賜物?、営業努力?、いやいやまさしく「コンセプトの勝利」ですね。おかげさまで思うつぼに入らせて頂きました(笑)。

買っちゃったから言うワケではないですが、それにしても、このサウンドのスネアが新品で4万円程度で購入できるのは驚愕です。この部分だけでも日本人に生まれて良かった(笑)日本はある意味楽器天国です。皆さん、この幸せは享受しないと。

PS.この場を借りて
イ○バシ楽器のMさん、今までどうもありがとう。横浜店に行っても頑張ってね!


TAMA ホームページはこちら
http://www.tamadrum.co.jp/
前のスネアへ 一つ前のページへ 次のスネアへ
ARI since 2004 Copyright All Right Reserved