「×××君は誰のファン?、影響受けたドラマーって誰?
アマチュアドラマーの中で、実はこの質問の解答に困る人は結構います。何故なら彼は漠然と「ドラムが楽しそうだから始めただけ」で、別に特定のドラマーを「カッコいい」と思って始めたワケではないからです。
皆さんはこういう経験ありませんか?

中学校や高校時代にバンドを初めて、クジ運が悪くドラムをやる事になって(笑)とりあえず初心者から一緒に楽器を始めた筈なのに、明らかにベースやギターのパートをやっている友人たちの方が上達が早くてとても焦った。

あるいは

ずっと他の楽器をやっていた友人がドラムを本格的に始めたら、あれよあれよという間に上達していって「今までの自分の努力は何だったのだろう」ととても空しくなった。

少なくとも私は上記の様な経験があります。
あ、くれぐれも
私はクジ運でドラマーになったわけではないのでその辺りはあしからず(笑)

で、これは何故だと思いますか?
一言で言えば
「検証の違い」「練習の質の違い」です。

元も子もないですが、そもそもの原因をたどれば
「やっている楽器が違うから」です。語弊があるかもしれませんが、ギターやベースの方がドラムと比較して練習しやすく(圧倒的に練習機会を作りやすく)、また他の楽器をやっていた人は、他の楽器で培った練習方法をドラムにそのまま当てはめます。だからギタリストやベーシストの友人の方が上達が早く、また他の楽器をやっていた友人はドラムを憶えるのも早かったのです。
では何故そうなってしまうのでしょう?

ある初心者ドラマーを追ってみましょう。

すべてのドラマーが自分の練習場を持っているわけではありません。ドラムスクールに通っていない初心者の場合、実際にドラムを叩く機会はメンバーが顔を合わせるバンドのリハーサルの時「だけ」になります。例えば音楽室や部室、リハーサルスタジオということですね。それでも最初のうちは自然とある程度は叩けるようになっていきます。まず体が反応します。ドラムに座り、ペダルを踏んづけ、スティックを振り、叩けばドラムは音を出します。その音を叩きながら(ドラムに向かいながら)聴きます。そして(あからさまな)ズレに気が付きます。それを少しずつ体が修正して行きます。違っているから直す、要するに「学習」ですね。そして次第に叩くための筋肉も付いてきます。

そして何ヶ月か経つと、少しずつですが進歩していきます。
メンバーから「あいつ上手くなってきたよ」と言われるのが、だいたいこの辺りですね。

周りから褒められると嬉しくなり、さらに「ちょっと上手くなってきた!」と自分でも意識し始めると、以前よりもドラムを叩く事が楽しくなってきます。「より速く叩けるようになりたい」とか、「もっと大きな音で叩けるようになりたい」とか、「もっと難しい事に挑戦したい」など、漠然としていますが欲求も出てきます。そして楽器店に行き始め、まず「メトロノーム」と「練習台」を購入します。もう彼は枕や雑誌では満足出来ないのです(笑)本当にそれらが必要なのかどうかが問題なのではなく、とにかく形から。メトロノームや練習台を持っていると「上手くなるんじゃないか」と期待して購入します。
※注:しっかりメトロノームと練習台を使えば実際に上達しますので誤解無きよう。

で、ここから先が問題です。

今まではバンドでコピーする曲を個人練習で「叩いて憶える程度」しかやったことのない彼。まずは急に練習がつまらなく感じます。っていうか自分が何をやっていいのか分からなくなるのです。バイトをしたり、ご両親に援助してもらったりしてドラムスクールにでも通っていれば、きっとその彼は毎週しっかり先生に宿題を出されて、実際に練習しようとしまいと(笑)、課題があるだけ「やる事そのもの」には不自由しません。一方、独学で学んでいる彼は「もうちょっと上手くなりたい」と思った時に、自分に「得な情報をキャッチする努力」を進んでやろうとする(あるいは自然とできる)ポジティブでアクティブなタイプの人でも無い限り、一体何から始めていいのか、何をやればドラムが上手になるのかが分からなくなってしまうのです。

そして他の楽器との決定的な違い、ドラムは悲しい事に
叩けるだけで「叩いている本人が」ある程度満足してしまう楽器
だということ。

そもそも何かを叩く事なんて誰でもできることです。また体全体を使って思いきり何かを叩くのはストレス発散にもなります。ドラムはちゃんとやるには「難しい楽器」だと思いますが、見た目「敷居は低そう」で「楽しそう」に見える罪作りな楽器なのです。他のパートをやっているバンドのメンバーが、リハの休憩時間にあなたのドラムを叩きたがった経験はありませんか?

赤ん坊や小さな子供は「アーアー」言いながらテーブルをよく叩いたりします。幼稚園児に最初に渡される楽器はカスタネット。太鼓とピアノがあるなら太鼓を叩きたがる子供の方が多い。太鼓の達人なんてゲームが意外に人気です。人にどう聴こえようがそんなものは関係ありません。人間の「本能の一つ」としてドラムに限らず「何かを叩いて音を出す事は実に気持ちイイ」のです。しかし成長し大人になるにつれ、TPOをわきまえず何かを叩いたりして音を出す事は「迷惑」とされ、人は次第に「叩く」という事を社会生活の中でやめてしまいます。
そこで話を戻してドラムの登場。当たり前の話ですがドラム(やパーカッションなどの打楽器全般)は、その音を出す仕組みから「叩いてもいい、叩く事がデフォルト」な楽器です。叩く事によって人間の本能を呼び覚まし、コンガやボンゴなんか叩きはじめた日にはアフリカの情景が浮かびます(笑)。だから楽しい、いやむしろ「楽し過ぎる」。

ゆえに自分の
「やるべき事に気付かない」「やるべき事にめぐり合えない」ドラマーは、そこそこ叩けるようになってくると、前述のように「何をやっていいか分からなくなる」ので、結局自分の好きな事や楽しい事しかやらなくなってしまいます。参考にすべきお手本がたくさんあるのに、叩いている自分が楽しいから、彼は好きなドラマーがいなくても、ちっとも困ってないのです。来る日も来る日も好きなリズムを叩く、好きなフレーズを入れて遊ぶ・・・などなど。
それでも最初のうちはしっかり練習になるのですが、年を重ね、あまり人から褒められなくなってくると(笑)何年も目の前の壁を越すことができない挫折感を味わいます。そして彼は最後まで「本当の練習」を知らずにドラムを辞めてしまいましたとさ。

な〜んちゃってね(笑)続く

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