日本が戦争をしていた頃、外来用語(英語)の使用が禁止されました。野球用語も英語禁止令が出され「東京ジャイアンツ」は「巨人軍」になり、「セーフ」は「よし」、「アウト」は「ひけ」、「ファウル」は「だめ」、「三振」は「それまで」と言って野球をしていたそうです。まあ、実際にはこんな事はほとんどなく、戦時中の状況を喩えるための大げさな、というかほぼ神話らしいのですが・・・
すべての人が英語を話せるわけではありません。私も英語が話せたら「カッコいいだろうなあ」と普通に思っています(笑)。喋れない私にとってはついつい難しいと思ってしまう英語ですが、外国の方から言わせると日本語の方がよっぽど難しい言語なんだそうです。バスで乗り合わせた、あるセネガル出身の方が言っていたのは「ひらがな」と「カタカナ」と「漢字」という3種類の文字が日本語を難しくしているのだそうです。

日本語はご承知の通り、中国からやってきた「意味のカタマリ」である「漢字や熟語」を、発音記号の如き「ひらがな」でサンドイッチのように挟んで記述します。また外来語や新しい言葉などは「カタカナ」で表記しています。特にカタカナは非常に便利な文字でどんな国の言葉でも「それなり」に読めるようにしてくれます。
古くは「シャボン」や「カステラ」に始まるカタカナによる外来語の表記、きっと最初はオランダ語辺りからスタートし、各国の単語を何とか誰でも読めるようにししてきました。しかし、そもそもカタカナ語は、日本語のある限り未来永劫続いていくパーマネントなものではなく、他の言葉のように廃れたり、その外来単語を読んでカタカナに書き換えた人の個性、あるいはその時代によって、当然表記は異なる場合があります。すなわち、

英単語「baby」は「ベイビイ」なのか、それとも「ベイベー」なのか(笑)

という永遠のテーマに答えられる人は居ません。

カタカナ語は時代によって修正される事がしばしばありますが、無理矢理外国語を変換しているので、読み方が何種類も通ってしまっている事は多々あります。たとえばニューヨークヤンキースの監督が
「トー監督」なのか「トー監督」なのか、また松井秀喜選手の同僚であるホームランバッターが「ジェイン・ジンビ」なのか「ジェイン・ジンビ」なのか、は非常に迷うところ。また、ドラマーの名前でもルナンデス」なのかルナンデス」なのか、「ウェッル」なのか「ウェッル」なのか、「ポーカロ」なのか「ポカーロ」なのか・・・(笑)

また何かと略して表現するのが好きな日本人。木村拓哉さんの事を「キムタク」、プリントクラブの事を「プリクラ」、ジャズ研究会の事を「ジャズ研」、スタートレックの事を「スタトレ」、そしてガンダムのプラモデルの事を「ガンプラ(笑)」と略してはばかりない日本人。ドラムの世界でも略される言葉のなんと多い事でしょう。

よって、Bass Drum(ベースドラム)を「バスドラ」なんて言うのは当たり前です。

略ではないですが、足で演奏するので
「キック」なんて言う場合もあります。
この場合は「
ック」ではなく「キッ」という発音になります。
ちょっと業界チックというか…、面白いですね、日本語は。
正式名称 Bass Drum Bass Drum Pedal Ride Cymbal Crash Cymbal
カタカナ表記 ベースドラム
ベードラ
バスドラ
キックドラム
キック
フットペダル
キックペダル
ペダル
ライドシンバル
ライド
トップシンバル
トップ
クラッシュシンバル
クラッシュ
サイドシンバル
サウンドチェックの時にオペレーターの人が高い確率で言われる略語
この中のカタカナ言葉(特に略語)が、たとえばアメリカ人に一体どれくらいの割合で通じるのでしょうか。

話は変わりますが、ツインギター(ギタリストが二人いる)のバンドでライブ前のサウンドチェックの際に、オペレータの人から「それじゃギターさん、どちらからでもいいので一本づつ音もらえますか?」と言われ、ギターの弦を6弦から開放で一本づつ弾いてしまったという「伝説」を持っているギタリストが、私の友人にいます(笑)。

知らなかった事とはいえ、彼はかなり恥ずかしい思いをしたことでしょう。

ドラムの世界、バンドの世界にはそういう
「知らないと恥ずかしい用語」が多々存在しています。いうなればちょっとした業界用語ですね。
ライブやレコーディングなどのマイクを立てる時には、太鼓やシンバルの音を一つづつマイクで拾い、ミキサーで「いい音」や「バランスの取れた音」にしてくれます。ドラムのサウンドチェックの際はだいたいこんな感じ。
ドラムのセッティングが終了し、エンジニアの方がマイキングをし終わると「それじゃドラマーさん!」からスタートします。

<以下オペレーターさんのセリフ>
キックからください・・・
ハイハットください・・・
スネアください・・・
タムを上からもらえますか・・・
3番目のタムをもう一度・・・
上からタムを回して・・・
シンバル一個づつ・・・
それじゃセット全体で・・・


・・・の後にはオペレーターさんの「ハイ結構です」もしくは「OKです」というセリフが入ります。
サウンドチェックの際、タムが二つなら「上のタム」と「下のタム」もしくは「フロア」という言い方をする場合が多いです。3つなら「真ん中」とか言う事もありますね。またチェック中、上記の様に「ください」「もらえますか?」と言われても、本当にドラムを外して持って行ってはいけません。当たり前ですが、これらは「音を出してくれ」という意味です。「タムを回して」も実際にタムを手に持ってクルクル回したらキース・ムーンに負けないくらいの伝説になります。まあそれはそれでカッコいいかも(笑)

最後になりますが、サウンドチェックとリハーサルが終了したら必ず
「それじゃ本番よろしくお願いします!」という挨拶を忘れないようにしましょう。
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